就労継続支援B型の工賃とは?平均工賃額や工賃が高い事業所を解説
就労継続支援B型は、障がいや体調の理由で一般就労が難しい方に「働く機会」と「訓練の場」を提供する福祉サービスです。
しかし、工賃の概要や事業所によって異なる金額に疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、就労継続支援B型の工賃の基本的な仕組みや平均額、工賃が高い事業所の特徴や取り組みについて、分かりやすく解説します。
利用を検討している方やご家族、支援者の方もぜひ参考にしてください。
就労継続支援B型の工賃とは
就労継続支援B型(以下、B型)は、障がいや体調の影響で一般就労が難しい方に、働く機会と生活リズムを提供する福祉サービスです。
ここでは、就労継続支援B型における以下3つの特徴ついて、分かりやすく解説します。
工賃と賃金の違い
就労継続支援B型の対象者と利用条件
平均工賃の実績に応じた変動性の報酬体系
それぞれ見ていきましょう。
工賃と賃金の違い
就労継続支援B型で支給される「工賃」と一般企業で支払われる「賃金」は、以下のように異なっています。
比較項目 |
工賃 |
賃金 |
契約関係 |
雇用契約なし |
雇用契約あり |
法的根拠 |
障害福祉サービスの一環 |
労働基準法 |
支給の目的 |
就労訓練の成果に対する謝礼 |
労働の対価としての報酬 |
工賃は「労働の報酬」ではなく「支援の一環」としての位置づけであるため、最低賃金法の適用対象外となり、金額にもばらつきがあるのが現状です。
そのため、B型事業所での作業は「働いてお金を得る」というよりも「社会参加の第一歩となる訓練」として捉えられるでしょう。
就労継続支援B型の対象者と利用条件
B型の対象者は、以下のように年齢や障がいの状態、過去の就労経験などに応じて市区町村が判断します。
知的・精神・身体障がいなどにより、一般企業での就労が困難な方
就労継続支援A型の利用が体調面などで難しいと判断された方
就労移行支援を利用したが、就職に結びつかず、次のステップとして支援が必要な方
障害者手帳を持っていない場合でも、医師の診断や自治体の判断により利用が認められた方
利用にあたっては、市区町村の障害福祉サービス受給者証の取得が必要となり、医師の意見書や支援者のアセスメントをもとに適性が判断されます。
平均工賃の実績に応じた変動性の報酬体系
就労継続支援B型の平均工賃はいくら?
型事業所の利用を考えるうえで、工賃がどの程度支払われるのかは重要な判断材料の1つです。
ここでは、厚生労働省が公表している最新の統計をもとに、以下について解説します。
令和5年の平均工賃(全国平均)
工賃の推移と背景
令和5年の平均工賃(全国平均)
厚生労働省が公表した「令和5年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃(月額)は23,053円です。
前年度(令和4年度)の平均工賃17,031円から、大幅に増加しています。
増加の背景には令和6年度の報酬改定に伴い、平均工賃月額の算定方法が変更されたことが影響しています。
具体的には、従来の「工賃支払対象者数」を分母とする方式から「一日あたりの平均利用者数」を分母とする方式へと見直されました。
障がい特性などで利用頻度の低い方を多く受け入れている事業所も、不利にならないよう配慮されています。
工賃の推移と背景
近年、工賃は少しずつ上昇傾向にあります。その背景には、以下のような制度的・運営的な要因が考えられるでしょう。
工賃向上計画の推進
報酬制度との連動
作業内容の多様化と付加価値の向上
具体的な要因としては、B型事業所の「平均工賃実績」に応じて基本報酬が増減する制度が導入された点です。工賃アップが経営上のメリットになると、各施設が工賃向上に注力するようになりました。
従来の業務に加えてパン・菓子製造、清掃業務など、地域ニーズに合わせた高付加価値の業務を取り入れる事業所が増加したのも要因の1つです。
就労継続支援B型における工賃の決め方の4つの要素
就労継続支援B型の工賃は、法律で一律に定められているものではなく、各事業所が独自の方針に基づいて設定しています。
ここでは、工賃を決める際に考慮される以下の4つの要素について解説します。
事業所の収益状況
利用者ごとの作業量や作業時間
能力や役割に応じた評価(能力給)
厚生労働省の「工賃規程」に基づく設定
それぞれ見ていきましょう。
事業所の収益状況
工賃の原資となるのは、事業所が行っている生産活動やサービス提供で得られる収益です。
たとえば事業所の収益源には、以下のようなものがあります。
封入・袋詰めなどの軽作業(企業からの受託)
パン・焼き菓子・雑貨などの自主製品販売
清掃業務・農作業・カフェ運営などのサービス業
ネットショップや地域イベントでの販売
このようなサービスから得た利益が、利用者への工賃に反映されるので、売上が安定している事業所ほど、高い工賃の傾向があるでしょう。
利用者ごとの作業量や作業時間
B型では、工賃の金額を利用者ごとの作業量や作業時間に応じて決定する事業所もあります。
多くの事業所では、以下のような方法で作業の内容を評価し、工賃に反映しています。
評価方法 |
支払い例 |
時間給制(時給方式) |
1時間あたり300円 × 作業時間 → 1日4時間作業 × 月20日通所 → 月額24,000円 |
出来高制(成果物方式) |
1個あたり20円 × 完成数 → 月に500個作業 → 月額10,000円 |
ミックス型 (時間+出来高のハイブリッド) |
・時間給部分 1時間あたり200円 × 1日4時間 × 月20日通所 → 16,000円 ・出来高部分 1個あたり10円 × 月に300個作業 → 3,000円 ・合計支給額 → 月額19,000円 |
事業所によっては、作業日数や時間の長さを重視して支給額を決めるケースも見られます。
能力や役割に応じた評価(能力給)
近年では「能力給」や「個別評価」を取り入れている事業所もあります。
たとえば、以下のような基準で工賃が加算されるケースです。
作業の正確さやスピード
リーダー的な役割を担っている
出席率が高く、安定的に参加している
このような評価制度は、利用者のモチベーション向上にもつながる一方、基準の明確化や公平性の確保が求められるでしょう。
厚生労働省の「工賃規程」に基づく設定
工賃を支給するにあたっては、厚生労働省のガイドラインに沿って、「工賃規程」の整備が求められます。
この工賃規程には、以下のような内容の明記が必要です。
工賃の算定方法(時間給/出来高/評価制など)
工賃の支払い時期や方法
減額・不支給の条件(欠席・遅刻など)
また、この工賃規程は監査や指導の対象にもなるため、制度上の整備も欠かせません。利用者が不公平感を持たないよう、誰にでも分かりやすく透明性のある規程作りが重要です。
就労継続支援B型の工賃が高い事業所の3つの特徴
B型の工賃は、全国平均では月額2万円前後ですが、中には3万円以上の工賃を支給している事業所も存在します。
ここでは、工賃が高いB型事業所に見られる3つの特徴を以下にご紹介します。
売上を生む「商品力」や「サービス力」がある
利用者の能力を引き出す工夫がある
地域や企業との連携が強い
それぞれ見ていきましょう。
売上を生む「商品力」や「サービス力」がある
工賃が高い事業所の多くは、安定して収益を生み出す商品力やサービス力が備わっています。商品力やサービス力の具体例は、以下のとおりです。
商品力(魅力的な商品を作る力) |
サービス力(接客の質や業務の丁寧) |
・パンや焼き菓子、ジャムといった食品 ・布小物・雑貨・クラフト製品 ・オリジナルアート作品やアクセサリー |
・企業や公共施設での清掃業務 ・地域に根差したカフェの運営 ・農作物の栽培や直売 |
魅力ある商品やサービスを展開している事業所は、継続的な受注が見込める強みを持っています。
ブランド化やEC展開によって販路を広げられる可能性もあり、そうした収益が利用者の工賃に直接反映されているのです。
利用者の能力を引き出す工夫がある
工賃が高い事業所では、以下のように利用者の特性や得意分野に合わせた作業の割り振りや支援が工夫されています。
作業の流れを写真やイラストで示したマニュアル
色分けや番号ラベルなどの視覚支援
視覚的に分かりやすい作業手順書の活用
最初は簡単な工程からスタートする
作業後にポジティブなフィードバックを伝える
モチベーションを高める評価制度(能力給など)の導入
こうした支援により自然と作業効率や品質が向上し、結果的に工賃の底上げにもつながっています。
また、本人にとっても達成感や自信が得られやすく、好循環を生む仕組みといえるでしょう。
地域や企業との連携が強い
賃の高い事業所は、地域や企業との関係性作りにも積極的です。
地域での信頼や認知度が高まることで、以下のようなチャンスが生まれやすくなります。
地元企業からの継続的な軽作業の受注
行政や自治体との協働プロジェクトへの参加
地域イベントや商業施設での出店・販売機会の確保
こうした外部連携を通じて、商品の知名度やブランド力を高めて安定した受注と販路拡大が実現でき、工賃の底上げにもつながります。
地域に根差した事業展開は、住民からの信頼や応援を得やすく、リピーターの獲得にも期待できるでしょう。
工賃向上には制度理解と実践的な工夫がカギ
B型における工賃は、利用者の生活の質やモチベーションに直結する重要な要素です。
しかし、その金額は事業所ごとに大きく差があり、その背景には「収益構造」「支援の工夫」「制度の理解度」といった複数の要因が関係しています。
工賃向上を実現している事業所は共通して「実践的な工夫」と「制度への理解・活用」を両輪で進めています。
利用者のやりがいと収入、そして事業所の経営安定につなげるためにも、実践的な工夫と改善が必要になるでしょう。
「選べる仕事」をテーマに、製造業を主軸とした多様な業種への取り組みを進めている「就労継続支援B型事業所SANPO」では、グループ全体でできる限り多くのチャレンジを支援しています。
やりがいや工賃の向上を実現したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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